私がうつ病になったらTMSで治療をします。精神科医がぶっちゃけて語ります。
May 10, 2026•Channel
AI Analysis
Data from YouTube Data API v3•Updated Just now
Video Overview
Video Details
Published3 weeks ago
Duration30:33
Video ID1WLP9YrEbfQ
Languageja
CategoryScience & Technology
PrivacyPublic
Made for KidsNo
Video TypeRegular Video
Performance Metrics
Views6.1K
Likes255
Comments81
Engagement Rate5.48%
Likes per 100 views4.16
Comments per 1K views13.21
Description
こんばんは。精神科医の芳賀高浩です。
今日は、もしかしたら視聴回数はあまり伸びないかもしれません。でも、今までの動画の中でも、かなり役に立つ内容になるのではないかと思っています。今日お話ししたいのは、TMSについてです。
TMSというのは、反復経頭蓋磁気刺激療法のことです。英語では transcranial magnetic stimulation と言います。簡単に言うと、頭の外から磁気を当てて、脳の特定の場所に弱い電流を起こし、脳の働きを調整していく治療法です。うつ病に対して有効性が示されている治療法で、日本でも保険適用になっています。
ただし、ここが非常に大事なのですが、保険適用になっているとはいえ、実際に保険診療でTMSを受けられる施設は非常に少ないです。全国でも限られた施設しかありません。そして多くの場合、保険診療で行うには入院が必要になります。つまり、「保険が通っているなら気軽に受けられるだろう」と思っても、実際にはそう簡単ではないのです。
まず最初に、はっきり申し上げておきたいことがあります。私はTMSを行っている業者やクリニックと提携関係にあるわけではありません。紹介料をもらっているわけでもありません。TMSを勧めることで、私に何か利益が入るということは一切ありません。そのうえで、今日は中立的な立場から、しかしかなり前向きに、TMSという選択肢についてお話ししたいと思っています。
なぜ私がTMSに注目しているかというと、抗うつ薬による治療には、どうしても副作用の問題があるからです。抗うつ薬は有効な治療です。必要な患者さんにはもちろん使います。ただ、薬を飲むことで、体重増加、口渇、便秘、眠気、胃腸症状、自律神経系の不調などが出ることがあります。薬を飲むこと自体がつらい、という患者さんも少なくありません。
抗うつ薬は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を調整し、BDNFなどを介して神経可塑性を回復させる方向に働くと考えられています。これはとても大事な作用です。ただ、内服薬である以上、脳だけにピンポイントで効くわけではありません。全身に作用します。そのため、消化器症状や自律神経症状、体重増加など、患者さんにとって不快な副作用が出ることがあります。
一方、TMSは頭の外から磁気刺激を与えます。磁場を発生させることで、脳の表面近くに弱い電流を誘導します。直接電気を流すわけではありません。強い電流を用いる治療としては、修正型電気けいれん療法、いわゆるmECTがあります。これは非常に有効な治療ですが、全身麻酔が必要で、筋弛緩薬を使い、原則として入院して行う治療です。重症のうつ病、精神病症状を伴う状態、緊急性の高い状態などでは非常に重要な治療法です。
それに対してTMSは、もっと弱い刺激を使います。刺激する場所は、主に左の背外側前頭前野です。前頭前野は、理性や判断、感情のコントロールに深く関わる場所です。うつ病では、扁桃体のような感情に関わる部位と、前頭前野のように感情を調整する部位とのネットワークがうまく働かなくなっていると考えられています。そこで、左背外側前頭前野に刺激を与え、その機能を高めていこうとするのがTMSの基本的な考え方です。
この発想は、かなり理にかなっていると思います。全身に薬を回して神経伝達物質を調整するのではなく、機能低下が関係していると考えられる脳の場所に、直接的に近い形で刺激を与える。もちろん万能ではありませんし、誰にでも効くわけではありません。それでも、治療の考え方としては非常に魅力があります。
副作用についても、薬物療法とはかなり性質が違います。TMSでは、刺激部位の違和感、頭皮の痛み、頭痛、筋肉が引っ張られる感じ、疲労感などが起こることがあります。まれにけいれんなどのリスクも指摘されていますので、適応をきちんと判断し、安全管理のもとで行う必要があります。ただ、一般的には、抗うつ薬のように全身の代謝や消化器、自律神経に広く影響する治療とは異なります。
昔から行われてきたTMSでは、10Hz刺激を30分から40分ほど行うプロトコールがありました。最近では、より短時間で行えるプロトコールも出てきており、数分程度で刺激自体が終わるものもあります。もちろん、診察や準備を含めればもう少し時間はかかりますが、治療そのものは比較的短時間で済みます。外来で行える環境が整っていれば、日常生活を大きく崩さずに受けられる可能性がある治療です。
では、どのくらいの頻度で行うのか。一般的には、最初の急性期治療として、週5回、6週間程度、合計30回ほど行うことが多いです。その後、必要に応じてメンテナンスとして週1回などの頻度で継続する場合があります。つまり、一度当てたら終わりという治療ではありません。脳のネットワークを刺激して状態を維持していくためには、一定期間の集中的な治療と、その後の維持治療が必要になることがあります。
効果についても、きちんと研究されています。抗うつ薬の効果は、プラセボと比較して一定の有効性が示されています。TMSについても、偽刺激を用いた比較試験が行われており、実際の刺激群のほうが改善率や寛解率で上回ることが示されています。もちろん、数字だけを見れば「劇的に全員が治る」というものではありません。しかし、薬が十分に効かないうつ病に対して、薬物療法とは別の治療選択肢があるという意味は非常に大きいと思います。
TMSの歴史を少し振り返ると、1985年にBarkerらが磁気刺激によって脳を刺激し、運動野を介して手の動きを誘発できることを示しました。その後、1990年代にうつ病への応用が検討され、左背外側前頭前野への刺激がうつ症状に効果を持つ可能性が報告されました。さらにその後、ランダム化比較試験が積み重ねられ、現在ではうつ病に対する治療法の一つとして位置づけられるようになっています。
ただ、現実的な問題は費用と通院です。保険診療でTMSを受ける場合、TMSそのものにも費用がかかりますし、入院で行う場合には入院費もかかります。高額療養費制度などで負担が抑えられる場合はありますが、そもそも6週間入院すること自体が難しい人も多いでしょう。仕事、家庭、学校、介護などがある中で、6週間入院して平日毎日TMSを受けるというのは、かなりハードルが高いです。
そこで自費診療で外来TMSを行うクリニックが出てきます。自費の場合、費用は施設によってかなり違いますが、30回で十数万円程度、1回あたり数千円という価格設定をしているところもあります。その後、メンテナンスとして週1回通うと、月に数万円程度かかることになります。これは決して安い金額ではありません。経済的に難しい方も当然いらっしゃいます。ですから、誰にでも気軽に勧められる治療ではありません。
それでも、抗うつ薬の副作用がつらい方、薬を増やしたくない方、1種類の抗うつ薬である程度よくなっているけれども十分ではない方、薬物療法以外の選択肢を考えたい方にとって、TMSはかなり有力な選択肢になり得ると思います。私自身がもしうつ病になったとして、薬を飲むか、TMSを受けるかを選べる状況であれば、まずTMSを検討すると思います。家族がうつ病になった場合でも、条件が整うならTMSを選択肢に入れると思います。
精神科医療は、これまで薬物療法と精神療法が中心でした。もちろん、それらは今でも非常に大切です。ただ、脳に直接働きかける治療、しかもmECTほど大がかりではなく、外来で比較的短時間に行える治療が出てきたということには、大きな意味があります。精神科の治療も、今後は薬だけではなく、脳刺激療法、心理社会的支援、生活習慣への介入などを組み合わせていく時代になっていくと思います。
一方で、TMSを過剰に理想化してはいけません。すべてのうつ病に効くわけではありません。重症度、病型、併存症、現在の薬物療法、生活背景、通院可能性、費用負担などを総合的に考える必要があります。また、双極性障害のうつ状態なのか、単極性うつ病なのか、精神病症状があるのか、自殺リスクが高いのかによっても判断は変わります。治療を受ける場合には、必ず精神科医の診断と説明を受け、適応を確認したうえで行うべきです。
それでも私は、TMSという治療法について、もっと多くの人が知っておいてよいと思っています。特に、抗うつ薬を飲んでいるけれど副作用がつらい、薬を増やすことに抵抗がある、あるいは今の治療に限界を感じているという方にとって、「薬以外にもこういう選択肢がある」と知ることは大きな意味があります。
経済的な問題があるため、全員に平等に届く治療とはまだ言えません。その点は非常に悩ましいです。しかし、医療技術というものは、最初は限られた人しか受けられなかったものが、少しずつ普及し、価格が下がり、制度が整い、より多くの人が使えるようになっていくことがあります。TMSも、今後そうなっていってほしいと思います。
今日はTMSについて、かなり率直にお話ししました。これは案件ではありません。私はTMS関連の業者やクリニックから何か利益を得ているわけではありません。ただ、精神科医として、うつ病治療の選択肢としてTMSはもっと知られてよいと感じています。
薬物療法が悪いという話ではありません。抗うつ薬に助けられている患者さんはたくさんいます。私も日々の診療で抗うつ薬を使っています。ただ、その一方で、薬だけでは十分ではない方、薬の副作用で苦しんでいる方、薬を増やしたくない方がいるのも事実です。そのような方にとって、TMSは一つの希望になり得る治療だと思います。
うつ病の治療は、一つの方法に決めつけるものではありません。薬物療法、精神療法、休養、生活リズムの調整、家族や職場の支援、そしてTMSのような脳刺激療法。それぞれの選択肢を、その人の状態と生活に合わせて組み合わせていくことが大切です。
今日は、TMSについて皆さんと情報共有させていただきました。精神科医の芳賀高浩でした。明日もまたお会いしましょう。では、また。