人類が再び月へ!アポロ計画と何が違う? アルテミス計画は月への着陸がスタート地点、最終的には火星に向かう補給地点に?【元宇宙飛行士・野口聡一さん解説】

Apr 4, 2026Channel
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アメリカが主導する月探査プロジェクト「アルテミス計画」。2022年、無人での月周回飛行に成功し、今回は10日間の有人飛行で月周回を行います。 人類が月へ向かうのはアポロ計画以来、約半世紀ぶり。なぜ再び「月」なのか、アルテミス計画の全貌とは。  のべ344日間の宇宙滞在を経験した元宇宙飛行士の野口聡一さんに、アルテミス計画を徹底解説してもらいました。  アルテミス計画は、アポロ計画以来となる月面への有人着陸・長期滞在などの持続的な月探査プログラムで、日本を含む世界61カ国が参画しています。  アルテミスはギリシャ神話の月をつかさどる女神です。これに対し、太陽をつかさどる神の名前が「アポロン」で、アルテミス計画はアポロ計画と対になっています。  アルテミス計画には5つのミッションがあります。2022年の「アルテミスⅠ」では、無人での月周回飛行に成功し、きのう宇宙船「オリオン」の打ち上げに成功した「アルテミスⅡ」は、10日間の有人飛行で月の軌道を周回します。  そして、2027年の「アルテミスⅢ」では複数の宇宙船と併走し、ドッキング機能を検証します。2028年初頭の「アルテミスⅣ」では宇宙飛行士2名が月面着陸に臨みます。早ければ、日本人の宇宙飛行士が加わるかもしれません。その後の「アルテミスⅤ」以降では、定期的に人を月面に送る方針です。  今回は、全長98メートルのロケットで宇宙船の打ち上げが行われました。  搭乗した宇宙飛行士4人は10日間を約5畳半の空間で生活します。そのうちの1人、ビクター・J・グローバーさんは2020年に野口さんと飛行をともにした宇宙飛行士です。 野口さん 「私と一緒に飛んだ時はルーキーの初フライトでしたが、とても前向きでムードメーカーでした。彼はアメリカ海軍のエースパイロットで、今回宇宙船のパイロット役に任命されています。打ち上げの3日ほど前に電話で話したときは、自分の任務に前向きで全くプレッシャーを感じていないようでした」 ーーQ.4人で10日間、約5畳半のスペースで生活するのは辛くない? 野口さん 「宇宙に行くと重力がないので、天井も床になります。極端な話で6倍使えるので、30畳あれば良いんじゃないという感じです。あとは我々はサバイバルトレーニングで雪山や洞窟で2週間過ごす訓練もあるので、それに比べるとずっと良いと思います。お互い気配りも大事ですが、地上で思うほど大変ではないと思います」  打ち上げられた宇宙船は、約10日間かけて月を周回して地球に戻ります。6日目には、月の裏側に到達する予定で、人類史上最も地球から離れた記録を更新する見込みです。 野口さん 「最初に地球の周りを回ってるのは、小さい衛星でよく使う手法で『スイングバイ』といって地球の重力で加速しています。今日の午前中、いよいよ地球の周回軌道を離れて、8の字軌道に入ったところで、月に向かって飛んでいる最中です」  1969年に月面着陸に成功したアポロ計画と、今回のアルテミス計画の違いは何でしょうか。  大阪市立科学館の渡部義弥・学芸員によると、アポロ計画では月面着陸がゴールでしたが、アルテミス計画では月面着陸はスタート地点に過ぎません。  アルテミス計画では、月面拠点の建設を目的としていて、水などの資源調査を行うため、トヨタの月面探査車「ルナクルーザー」が使われる予定です。月で人の居住や燃料補給が可能となれば、最終的には火星に向かう補給地点になるかもしれないということです。 野口さん 「月面に水があることがNASAの様々な科学観測から明らかになりました。水があれば、太陽電池で電気分解することで水素が取れるので、ロケット燃料ができます。2日の打ち上げ成功で、アメリカのメディアには『これで月は我々のガソリンスタンドになった』と見出しを立てていますが、うまくいくかは今後の開発次第だと思います」  火星は地球から一番近い太陽系の惑星で、直径6792キロと地球の約半分です。地球からの距離は約2億2800万キロ。野口さんによると、片道6カ月程度の距離です。最高気温が30℃、最低気温はマイナス140℃。大気の95%が二酸化炭素で、酸素はほぼありません。  火星を居住空間にすることは、本当に可能なのでしょうか。 野口さん 「これだけ見ると、火星は大変なところだと思いますが、例えば、金星の温度は500℃で、火星の1個外の木星はガスしかないので地面がありません。そういう意味では我々が行けるのは火星しかありません。気温は建物で何とかなりますが、あとは大気ですよね。少なくとも二酸化炭素は毒ガスではないので、どうやって酸素を作るか研究している方はたくさんいます」  野口さんは「これからは”深宇宙時代”の幕開け」と表現しています。 野口さん 「ようやく地球の周りの宇宙環境を使う時代から、月・火星といった地球ではない地面があるところに向かっていける。地球の周りでは、あくまで地球を見てすぐにデータを送ることが大事になる。それに対して、月や火星の地面で物を作り出せれば、ガンダムの「サイド7」のようなスペースコロニーで独自の文化が広がっていく。それが、ようやくアルテミスⅡのオリオン宇宙船で少し現実化したと思います」  人類が月へ向かうのはアポロ計画以来、約半世紀ぶりです。なぜ、長らく人が月面に着陸した事例がないのでしょうか。  渡部義弥・学芸員によると「アポロ計画の当時は、激しい宇宙開発競争が繰り広げられていて、多少のリスクと莫大なコストを分かったうえで打ち上げていた」。アメリカの成功後は、国際宇宙ステーションの運用など、地球近くでの宇宙開発にシフトし、遠方は無人の惑星探査機が優先になったということです。 野口さん 「アメリカ人の率直な言い方をすると『もう月は行ったから、また行ってもしょうがないじゃん』というところだと思いますが、今回は月を奪われそうになってきたから、慌てて戻ったのが正直なところだと思います」  ロケットの打ち上げ数は世界的に増加していて、アメリカに加えて中国の存在感が増しています。2025年はアメリカ192回、中国91回でした。アメリカと中国の開発競争が激化しているようです。  中国の月探査計画である「嫦娥計画」では、2024年に世界で初めて月の裏側から岩石を採取することに成功。2030年までに月面着陸、2035年までに月面拠点の建設を目標としています。 野口さん 「余りきな臭い話しはしたくないですけど、これが裏テーマで、アメリカがここまで本気になっている理由です。現時点で月の裏側に中国の無人ロボットが何機も着陸して、実際に月から石を運んで帰ってくることに成功しています。アメリカもうかうかしていると、いつの間にか月が中国のものになってしまうんじゃないかと。少なくとも人が着陸するところは、何が何でもアメリカがまた月でのプレゼンスを見せなきゃいけないっていうのが、大きなモチベーションになってると思います。半世紀前のアポロ計画もアメリカとソ連の競争だった。ある程度の競走は健全だと思う」  一方、民間の宇宙開発も進んでいます。アメリカではイーロン・マスク氏のスペースX社が2025年にロケットを165回打ち上げました。インドでは宇宙開発のスタートアップ企業が急増し399社に。アメリカに続き世界2位となりました。日本では民間ロケット「カイロス」の打ち上げに挑戦しています。  今後、宇宙開発が進むことで、人類の生活はどのように変わっていくのでしょうか。 野口さん 「スペースXの台頭、インド、そして日本でもスタートアップが進んでいる。これは単に宇宙好きのためだけではなく、ビジネスの進展と歩調を合わせている。スペースXは『スターリンク』というサービスで非常に有名で、インドや中国の宇宙関係のスタートアップは、AIなど様々な形で我々の生活を豊かにする方向に発展しています。宇宙のための宇宙ではなく、地上の生活を豊かにするための宇宙という側面がどんどん広がっていくと思います」 (「newsおかえり」2026年4月3日放送分より)

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