【識者解説】点滴パックや手袋、注射器もナフサが原料 石油危機でコスト増…医療サービスが低下する? ジェネリック医薬品が不足する可能性も
Apr 3, 2026•Channel
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ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、命に関わる医療現場にまで、石油不足の影響は及びつつあります。窮地に立たされた日本の医療の現状とは。医療ガバナンス研究所・理事長の上昌弘さんと“深掘り”します。
■点滴パックや手袋、注射器もナフサが原料 医療現場に“石油危機”の波
ナフサは石油製品の一種で、医療現場ではナフサを原料とするプラスチック製品が多く使われています。例えば、点滴のパックや手袋、注射器、医薬品の包装などです。
横浜・都筑区の中川駅前歯科クリニックでは、ゴム製ではなくアレルギーの少ない石油由来の手袋を使うのが主流です。患者ごとに手袋を交換するため、1日500〜800枚使いますが、在庫の確保が困難になりつつあるということです。
二宮威重院長は「イラン情勢の悪化で一気に販売停止や個数制限がかかるようになった。新年度には学校の歯科健診などで大量に手袋を使うので不安だ」と話します。
石油危機による品不足に加えて、上さんは「今の時期は商品数が少なくなりやすい」と指摘します。4月は価格改定のタイミングで、値上がり前のワクチンなどを医療機関が買いだめするため、商品数が少なくなるということです。
こうした供給不足の中で、最も影響が懸念されるのはーー。
上さん
「災害に弱いのは人工透析です。週3回必要になるので、こうした供給不足が起こると命に関わります。おそらく今回も透析からトラブルが起こると思います」
■ナフサ不足でコスト増…医療機関の倒産・閉鎖が加速する?
一方、2025年の医療機関の倒産件数は66件、休廃業・解散は823件で、いずれも過去最多となっています。
上さんは「このまま石油危機が続けば、採算の取れない医療機関は次々と閉鎖する」と指摘。特に、小児科・救急病院・産婦人科などは夏ごろから閉鎖する病院が増えることを危惧しています。
上さん
「どんどん物価が上がっても、医療は公定価格なので値上げできません。赤字になったら困るので、赤字部門を切る。小児科や救急、産婦人科を縮小して、それでもダメなら倒産する前に閉鎖する。こうした動きが加速すると思います」
さらに、梱包材・フィルムの価格高騰でジェネリック医薬品が不足する可能性も指摘されています。
ジェネリック医薬品はアジア諸国などの中小・零細企業が多く参入していて「少量多品目」の生産構造が特徴。最悪の場合は薬が作れない事態になるということです。
上さん
「今回の石油危機は日本だけではなく、アジア全体の問題です。ジェネリックはアジアで共同して作られています。例えばベトナムが作れなくなれば、何かが足りなくなります。包装が足りなくなる場合もあれば中身の場合もあって、何が起こるか読めません」
■ことしの夏にコロナや感染症が増えれば病院は対応できない?
先月31日、高市総理は「医療用手袋やエプロンなどの医療物資の供給に万が一にも支障があってはならない」と表明。経産省と厚労省に安定供給の確保に向けた「対策本部」を設置しました。
ナフサについては、中東以外からの輸入を拡大する動きが出ています。
これまでは国内消費の約4割を中東から調達していましたが、4月からはアメリカやインドなど中東以外からの調達を倍増させます。経産省によると、代替調達や企業在庫を合わせると国内需要の約4カ月分は確保できているということです。ただ、中東からの輸入再開のめどは立たず、全体の輸入量は減少する見通しです。
心配なのが、今年の夏です。燃料不足による計画停電が行われた場合は、エアコンが使えないかもしれません。さらに薬や病院自体が不足する可能性もあります。
上さんは「熱中症に加えてコロナなどの感染症が増えれば、多くの人が命を落とす恐れもある。国が病院に資金を投入するなどの対策が必要」と指摘します。
上さん
「医療機関は患者が多い冬場に稼いで、患者が少ない夏場は赤字が出ます。ことしは夏場に物価が急速に上がると予想されていますが、そうでなくても病院は疲弊してます。運転資金がなくなる医療機関が続出するはずなので、国や自治体は(医療機関が)倒れないように資金を入れることが求められると思います」
(「newsおかえり」2026年4月2日放送分より)