「油性マジックがあっという間に消えた」秒速250メートルのミスト 社員11人の会社が開発 洗浄力とダメージレス両立し半導体業界に挑む
Mar 5, 2026•Channel
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九州の半導体産業は、台湾のメーカー・TSMCの熊本進出を機に急速に拡大しています。
こうした中、福岡県筑後市の社員11人の小さな会社が半導体業界に新たな風を吹き込もうと奮闘しています。
◆油性マジックがあっという間に消えた
装置から高速で吹き出すミスト。ガラスの容器に書かれた油性マジックの線に当てるとあっという間に消えました。
このミストはわずか1000分の1ミリ単位で調節でき新幹線の3倍近い秒速250メートルで噴射しています。
装置の生みの親は福岡県筑後市で環境関連機器メーカー・「オーラテック」の社長・江口俊彦さんです。
オーラテック 江口俊彦 社長
「いかにダメージを与えないでデリケートなものを洗うとなると速度は落とせない。速度を上げてミストを小さくすることで高圧洗浄機の運動エネルギーを超えるんですよ。狙っているのはそこなんです」
この独自の洗浄技術で今、勢いづく半導体産業へと挑んでいます。
◆社員はわずか11人。
2000年に会社を設立した江口さんは直径0.001~0.1ミリの非常に小さな気泡=マイクロバブルを作る技術を生かし、魚の養殖に必要な酸素を供給する装置や家庭用のシャワーヘッドなどを世に送り出してきました。
順調に業績を伸ばしてきた江口さん。
4年前、半導体関連事業者からある現状を聞かされます。
オーラテック 江口俊彦 社長
「半導体が(洗浄に)ものすごく水を使うと。いろんな薬品を途中で使うけど最終仕上げは(不純物を取り除いた)超純水しか使わない。高圧洗浄機とか使ったら半導体のパターン自体が壊れてしまうから。物は壊さないけどきれいにする」
◆大量の水使う半導体の洗浄 削減が課題に
半導体製造はおよそ数百の工程が必要とされ、そのうち洗浄工程は3割ほどを占めるといいます。半導体業界に詳しい九州工業大学大学院の和泉亮教授は洗浄工程について水の使用量とコスト削減が課題と話します。
九州工業大学大学院 和泉亮 教授
「一般的な半導体工場では1日20万トン以上(使用する)。人口67万人の都市が1日に使用する水の供給量に相当します。水をとにかく減らす工夫は大事で、現実的には最小限使用しなければいけない水の量がある。一度使った水の再利用する方法で各工場は取り組んでいるようです。コストが非常にかかってしまうので再利用の回数を制限しているようです」
◆「節水」と「ダメージレス」叶えるミストが生まれた
大量の水を使う洗浄工程。
そこに新たな可能性をもたらしたのが江口さんが生み出したミストの技術です。
実は江口さん、9年前から「節水」と「ダメージレス」をテーマに新たな装置の開発を続けていました。
オーラテック 江口俊彦 社長
「泡は水の中に空気を小さく入れて作っている。そこで空気の中に水を小さくして入れたらどうなるんだろうと思ったんですよ。そこでですね、小さいミストが出るようなものができたんですよ」要は(この装置で)環境にやさしい洗浄方法として提案したかった」
◆まるで風のよう”水を感じない”ミストに
今年1月、江口さんの元に一つの部品が届きました。
ピンセットで慎重に扱う必要があるほど小さなものですが、これが装置の「心臓部分」になると話します。
オーラテック 江口俊彦 社長
「1000分の2ミリ、3ミリというミストを選択的に狙って、使っている水の量が1分間に1~2ミリリットルとごく微量ですので、それを自在にコントロールするのが至難の業だったんです」
届いた部品を取り付けて装置の試運転です。
オーラテック 江口俊彦 社長
「(以前は)これを調節してミストのサイズを調整していたけど同じところに2度合わせられないんですよ。良かったところが分からない。それを自在に選択できるようにしたのがこちら。10分動かしても(水位は)ほんの数ミリしか下がりませんから」
RKB 小松勝 記者
「本当に風みたいな。ちょっと水を感じるんですけど、ほとんど風が吹いているような感じですね」
◆「油性マジックはこのくらいで落ちるんだ」つかめた感覚
この日江口さんが訪れたのは、北九州市の「福岡県工業技術センター機械電子研究所」。
装置の性能を確かめようと、ミストの「速度」や「再現性」を測定します。
オーラテック 江口俊彦 社長
「体感的に今までやってきたのと違ったのは油性マジックが前はうまく落ちる時と落ちない時があった。今回は再現性があるからきっちり落ちたんですよ。『油性マジックはこれくらいで落ちるんだ』というのをつかめた。これは油性マジックに限らず、他の汚れでもこれくらいで汚れに対してアタックできるのがつかめるようになった」
福岡工業技術センター機械電子研究所 機械技術課 村田顕彦さん
「条件を絞るのは大変だなと改めて分かりましたね。いろいろ工夫されているので、もうちょっと粒径が小さくできるなら楽しみだなと」
◆「自然環境を守りたい」江口さんの思い
半導体を洗浄する装置の開発を通して自然環境を守りたいという江口さん。
実用化に向けて一歩ずつ前に進んでいます。
オーラテック 江口俊彦 社長「いいところまで来ているような感触はあるんですよ。ここから先はこちらだけで進めるのではなく洗浄装置を扱っているメーカーに協力してもらって最後仕上げるような形になるなじゃないかなと。できれば年内に着手していきたい。製品化はそれから」
記者 Q登山で例えると?
オーラテック 江口俊彦 社長
「7~8合目まで来ているような感じはあります。手応え的に」
詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2507938